平野を持つ石1(土坡石)

山水石の代表は、直接に山々を感じる石です。

 

しかし、平野を感じる事を元にして、その平野での起伏を山々とみて、風景感を得ているものが多数あります。

 

普通この手の石に、[土坡石]又は[段石]と言われている恰好の石を多く見ます。

 

そこで、先ず最初に[土坡石]に属する3種の石を選んで写真を載せ、文章を書きました。

 

次のページで[段石]を取り上げますが、共に理屈っぽいお話から少し離れてお読み戴きたく思っています。

 

全く偶然ですが、[土坡石]では3種とも[庄内川]の石になってしまいました。

次に2種の[段石]を載せますが、2種共に[瀬田川石]になっています。

 

先ず[土坡石]の1番目のこれは、庄内川上流の土岐川の産。

庄内川を上に上にと行くと、JR中央線が名古屋を出て最初に入るトンネルになるあたりの山間を抜けて、岐阜県に入ります。

 

最初の街は多治見市。

岐阜県に入ればもう土岐川と名前をかえます。

 

この石は多治見市内の渓谷で発見しました。

 

中央高速道路が出来た今では、道を見付けるのが難しいような渓谷が多治見市内にあり、そうした(虎渓山の下を通る)旧道にその河原はありました。

風神の文へ

【春日野】 写真7 

[左右38cm]

 

畑と藪とを越えてやっと到達するこの河原は、見たところブルトーザーが入っていない様子でした。

 

古くからの累々と折り重なった石が、その河原にあります。

石好きの人も滅多に見掛けません。

この石は、1980年頃にここで発見。底部はもっと厚かったのでしたが、川で既にこの姿を見せていました。

 

興 奮!

 

写真で濃い色の部分は濃い緑で土岐川、庄内川で二つと見ない質。

ベースになっている白い層も、この界隈で見たことありません。

帰り道で、助手席で夕日に映えたこの石は、実にきれいでした。

大きい平野に山々が見えるこの時の印象は【春日野】です。勿論、底部は切断してあります。

[与十郎石]はこれのもっと凄いもだったでしょうか?

 

 

次の石も、庄内川の石。

JR中央線、高蔵寺なる駅に最も近いあたりの庄内川にこの石はありました。

【悠 久】 写真8 

[左右29cm]

 

1985年頃の酷暑の日。

大きい石に挟まれて窮屈そうにしていました。発見したときは、何故か白い色をしていましたが、余りの美しさに興奮。

 

家に持ち帰りました。洗ってみると、これは黒いではありませんか!

 

凄い!と更に大興奮。

 

川で白く見えたのは、上流の岐阜県の街々で陶器を作っている工場が多いので、恐らく、陶土が表面に付着していていたのであろうと思っています。

 

大きな石に挟まっていたからか、陶土で白くなって見えたからか、この石は私の手元に来ました。

幸運です。

それは、勝手にそう思っているに過ぎないのでしょうが、この石に限らず、手元にある素敵な石は、全部、幸運が私の手元に運んでくれた感じがしています。

 

仮に購入した石にしても、同じ石は他にありませんから、手元にあることは幸運以外の何ものでもありません。こうした幸運に恵まれ続けている私は幸福です。

 

写真では台に載せていますが、底部は平らで座りはこのままでOK

でも、台に載せた方が何故かうつくしく見えます。

 

やはり、台に載せることは、正装するようなもので、人も正装した方が立派に見えます。

 

殊に展示した場合、石は正装で臨むのが礼儀であると考えるのは、間違いではないと私は考えています。

次の石は購入です。

愛知県の安城市にあった石のお店で買いました。水石を販売しておられる店で、庄内川の石が何万円かの値段を付けて売られているのを、この時初めて見ましたし、その後も見たことがありません。

さて、その店の店主さんは、この石を底部切断された石と思っておられたそうです。

しかし、底部は全く平らであるものの、天井と平行ではない為に、台に載せないと傾いてしまいます。

【金 剛】 写真9 

[左右39cm]

 

 

上部はご覧のように虎石のたぐいですが、底面は真っ黒な梨地肌です。

 

昔、京都の九十九会に出品したとき、瀬田川石の地元である大津市の石好き諸氏が[庄内川産]と書いてあるこの石に驚いておられたのが印象的です。

 

どこのどなたが庄内川のどの河原で発見されたのかわかりませんが、この石が手元に来たのも明らかに幸運です。

 

さて、上記3個の石は、平野に山を持つことで成り立っている石です。

 

写真7、8、9を[土坡石]と言っています。坡面とは、なだらかな坂の意味なのに、水石では一般に平野に山々を指しています。

その理由は、恐らく【春日野】と【悠久】に見られるように山に裾があるものから起きたイメージによるものでしょう。

裾のない感じの石、【金剛】も土坡石と言っているのですが、まあ呼称のことですから許されていいとすべきです。

 

 

この項目で注目して戴きたいことは、これらの平野の上にある山々(隆起物)がどれも石の中央部、つまり、平野の方向を向いて、しかも中央部の平野を取り巻いている感じを持っていることです。

 

そして、それ故にそれらは石の中央部に視線を安定させ、全体として落ち着きを得て、鑑賞の対象物となれています。

 

結局、この種の石も[中心に視線が集まるもの]が良いようです。

 

 

隆起物が平野の方向、つまり石の中心に向かっていない石を私は持っていませんから、ここで現物の写真で見せられません。

 

 

しかし、後に出てくる[●集・中心的の意味]の中の二組の写真を見て下さい。

最近は便利な世の中になって、【金剛】の山の部分と【遼遠】の主峰とをコンピュータで変形をさて見て戴けます。

 

結果は、明白になっています。