序 言 と 大 八 洲
【序 言】
私は、このホームページで、先ず【水石の鑑賞】について、そして更に【水石】について、私の考え方を説明します。
この考え方に関する記述は、【本論】に始まり【立ち石】の中の[結論]で終わります。
今まで[水石に関して述べられてきた記述]と異なった視点に立ったものですから、馴染み難い面があるかも知れません。
しかし、水石が[鑑賞物としての資格]を認められるために必要であろう条件を述べています。
お読み下さり、参考にしてくださると有り難いと思っています。
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瑞陵の文へ
【大八洲】写真1
[左右58cm]
深遠の文へ
では先ず、はじめに私が所有できた石を二つ見てください。
共に瀬田川の産で、この【大八洲】と次の【大和】です。
この【大八洲】は梨地肌の真黒石で、部分的にツルツルに川擦れしていて、梨地肌と混在しています。
写真で正面に見えている側が梨地肌で、反対側つまり向こう側はツルツル。恐らく、川にあった時に、梨地肌の部分が埋まっていて、ツルツル側のみ擦れたからでしょう。
瀬田川は昔から、琵琶湖より流れ出るただ一つの川であり、落差が大きいので、激流で有名。
この石を叩くと美しい金属音を発するため、硬い石であるのは疑えません。激流とは言えよくもまあこんなに硬い石が擦れるものだと感心です。
この【大八洲】は素敵な格好の山を感じさせています。
瀬田川石の特徴の一つに[流れるような曲線、又は曲面]があります。
激しい水流がこの曲線・曲面を作ったという説が主流ですが、私は水流の力ばかりでないのではないかと考えています。
何故ならば、瀬田川の周辺の土中から出たらしい石をワイヤブラシで擦ると限りなく埃状のものが出て、更に擦り続けると段々と石は減ります。
毎日根気よく擦り続けて、丹念に観察すると、何と減り易い部分と減り難い部分とがあることに気付きます。
減り易い部分を手が痛くなるのを我慢して更に擦ります。するとおしまいに、なだらかな曲面に仕上がる場合があるのです。
つまり、瀬田の石には最初から石自身の成分の組み合わせにムラがある部分があるらしい、又は、空気・水などによる浸食の度合いが異なる部分が混在しているからムラになるらしいと考えられるのです。砂を伴う激しい水流によって、このムラが絶妙な曲線を作る原因の一つになっていると考えるのもおもしろいと思っています。
さて、この石の底部は切断ではありません。天然の儘です。
いつも観る度に、よくもこんな具合の良い石があるものだと感心してしまいます。
購入したのは名古屋にあった石のお店[奈古埜]
私が持っている石では最高額を払っています。
入手して30年くらい経った近頃(2008年)、黒色が深い感じになり、言うところの[持込の味]が良くなりました。
石は地球の上で何十億年なる歳月を経ています。それを、たかが何十年の命しかない我々人間の手元に置ける幸せを思うと、石に申し訳ないような気持ちになるのは変でしょうか?
この石は【大八洲】と銘じ、1999年に京都市建仁寺で行われた九十九会に出品しています。奥の大きい床の間に飾らせて貰えて、想像以上の好評を得ました。
この時、この石が産地の何とかいう人の納屋に置いてあったのを知っている人がいました。勿論石好きの一人。
その人は『こんなに良くなると思わなかった』と云っておられました。