一つの実験

 

この二つの写真は、写真3【遼遠】の[正面]からと[裏側]からとを低い視点で撮影したものです。

 

この低い視点は、普通に人が自然の風景にある山を見る視点です。

 

写真6は写真3【遼遠】の[正面]の姿で、写真5は[裏側]の姿。

 

【遼遠】の上方からの写真である写真4を見て、【遼遠】の裏側(つまり、写真4の上方向)から見た場合を想像してみましょう。

 

【遼遠】に上方からの写真4を[普通に石を観る視点で]見た場合、石の中央部は手前に出っ張り、左右は後ろにさがって行く訳で、これは[逃げ]そのもので、下記写真5は石としては[裏面]になります。

 

がしかし、視点の高さが地平線である写真5では[逃げ]を感じません。

写真5

写真6

 

写真5の状態は、写真で見る限りで[裏面]に見えません。

ここに問題があります。

 

あの平野に孤立した感じを持つ[富士山]を見る場合で考えてみましょう。

 

飛行機から見れば、富士山は、中華どんぶりを伏せたような格好です。

 

 

中華どんぶりを伏せて机に置いて眺めた場合、左右に[逃げ]を感じないわけはありません。それにも拘わらず、現実の[富士山]に[逃げ]が無いのは何故でしょうか。

 

理由その[1

普通、富士山を見るのは何キロ、何十キロも離れた遠距離からです。

遠距離では二つの眼による視差がないから故に、上下左右が等距離にあるように見え、[地面から空に聳えた立派な山]を認識する方向に気持ちは行きます。

 

理由その[2

人の視点の高さは、富士山の高さから見れば地平線すれすれです。その為に、眼前の方向に延びて来ているであろう裾野をすら実感し難く、単なる地平線かのように感じているようです。

 

 

その結果、写真5のように逃げを感じないのです。

 

この二つの理由は、よろずの山々を見る場合に当てはまります。

 

現実の風景に於ける山々は、その山に逃げがあっても、逃げを感じ取れなかった事を記憶して下さい。