雨 宿 り

集中心的の意味へ

【揖斐川石・雨宿り】写真14 

[左右31cm]

 

揖斐川町内の、揖斐川の堤防を挟んだ東側に[水峰園]という盆栽を業にしておられた家があります。

昔、そのお庭に多くの揖斐川石が放置されていて、それらの中にこの石はありました。

値段を聞くと五百円と言われ、大喜びで買って帰りました。

 

京都・九十九会に出品した時に、瀬田の蓬ではないかと言う業者氏がありました。

肌が瀬田の蓬にとても似ているかららしいです。

しかし、この石は紛れなく揖斐川の石です。

 

瀬田の本蓬と言われる石は基本的に緑色〜青色のものです。そして、単に緑色が似ているのみでなく、緑色が持つ紋様にも類似したものがあります。

揖斐の青石〜青黒石と色の傾向と紋様に於いて同じジャンルに属すのでしょうか?

川が異なっても、このように似ることもがあっても変ではありませんが、産地を揖斐と言うより瀬田と言った方が高価?であるかも知れなく、揖斐を身近に感じている私としては、揖斐の石を瀬田の石と言われることは少々口惜しくなる気分です。

何故ならば、昔の本で、水石の産地として最も古いのは京都の加茂川であり、その次に揖斐川と書かれていた記事を見た記憶があります。瀬田川はもう少し新しい時期に登場したとなっています。それにしても、瀬田川は多くの名品を世に送り出していますから、揖斐川石の方が瀬田川石より上等であるなどと言いたい訳ではありません。

まあ歴史の変遷の一こまを見るきもちですが、揖斐川は瀬田川より私の住まいに近いせいで、あの加茂川と並び称された揖斐川に贔屓目になるのでしょう。

 

さて、この石に台を付けて貰った時に、台の左側の平ら部分を上部の石の格好に沿って出来上がったものの、台そのものが逃げた感じで見苦しく困りました。

 

ふと思い付き、ご覧のように、台の左端の寸前に凹みを付けて貰いましたら、見事に逃げ感がなくなり驚きました。

 

成功です。

 

逃げというものは、それを感じなければ問題はありません。

石の恰好、殊に「逃げ感」を感じ取る人間の心理の奥深さ、不思議さを感じます。

 

 

 

さて、この石は、上下をひっくり返すと何と山形の一種になります。山形の場合の底部とは、ご覧の天井になる訳で、座りは抜群です。次の【写真14の反転】写真15がそれです。

【写真14の反転】写真15 

[左右31cm]

 

【写真14の反転】写真15の方は、何故か台を静岡県藤枝市の山梨さんに依頼しています。

山梨さんは、彫り込み、仕上げに電動器具を使っておられません。

そのせいでしょうか、台はいつも力強いようです。

台というものも、色々個性があって興味は尽きません。

山梨さんの作では【招月】の台があります。

【招月】の台もそうですが、この石も台の力強さに支えられて、何だかごつい感じの石となっています。

本人としては、毅然としたこの状態をとても気に入っています。

言うまでもありませんが、この状態に底部は全くの平らで、「座り」はこのままです。

しかし、この台を付けて戴けたことで存在感は確実なものになりました。

底部が平らですので普通はもっと薄い台になるかも知れないでしょうに、山梨さんはこの厚みの台にされました。

この厚み故に確固たる存在感になったと私は思っています。

【招月】の台とこの台とを見比べ、他の石の台とも見比べ、何かを感じて下さると嬉しいと思っています。

 

 

 

 

 

次に石に穴が開いているものを見ていただきます。